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2026年10月24日 更新
工場や倉庫の売却を考え始めたとき、「売却価格がいくらになるか」と同じくらい気になるのが、「売却にどれくらいの費用がかかるのか」ではないでしょうか。工場・倉庫の売却では、仲介手数料や税金といった一般的な費用に加えて、測量、建物の解体、機械設備の撤去、土壌汚染の調査など、住宅の売却ではあまり発生しない費用がかかることがあります。売却価格だけを見て計画を立てると、最終的な手取り額が想定より大きく減ってしまうことも少なくありません。
本記事では、工場・倉庫の売却にかかる主な費用を一つずつ取り上げ、それぞれの金額の考え方や、どのような場合に必要になるのかを分かりやすく解説します。あわせて、機械買取の現場で実際によく見られる、残された機械設備の撤去費用を抑えるための考え方もご紹介します。
工場・倉庫の売却にかかる費用は、大きく分けると、どの物件でも発生しやすい「基本的な費用」と、物件の状態や売却の条件によって必要になる「物件ごとの費用」、そして売却で利益が出た場合にかかる「税金」の3つに分けられます。基本的な費用には、仲介手数料、売買契約書に貼る印紙代、抵当権抹消などの登記費用があります。物件ごとの費用には、測量費、建物の解体費、機械設備や残置物の撤去費、アスベストや土壌汚染の調査費などが含まれます。
このうち、物件ごとの費用は金額の幅が大きく、物件によっては基本的な費用を大きく上回ることもあります。特に古い工場や、長年操業してきた工場では、解体や撤去、調査の費用が手取り額を大きく左右するため、早い段階で「何が必要になりそうか」を把握しておくことが重要です。以下、それぞれの費用について詳しく見ていきます。
不動産会社に仲介を依頼して買主を見つけてもらった場合、売買が成立した時点で仲介手数料を支払います。仲介手数料には宅地建物取引業法で上限額が定められており、売買価格が400万円を超える場合は「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた金額が上限です。たとえば売買価格が1億円の工場であれば、上限は306万円に消費税を加えた金額になります。売買価格が大きい工場・倉庫では、仲介手数料も相応の金額になるため、あらかじめ資金計画に入れておく必要があります。
なお、2024年7月からは、売買価格が800万円以下の物件については、仲介手数料の上限を30万円(税別)とする特例が設けられています。地方の小規模な倉庫など、価格が低い物件の場合は、この特例が適用されることがあります。一方、不動産会社などが買主として直接物件を買い取る「買取」の場合は、仲介が発生しないため、仲介手数料はかかりません。買取と仲介の違いについては、工場・倉庫を「買取」と「仲介」で売る違いとは?で詳しく解説しています。
不動産の売買契約書には、記載された契約金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。不動産の売買契約書については税率を引き下げる軽減措置が設けられており、2027年3月31日までに作成される契約書が対象です。軽減措置が適用される場合、たとえば契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下なら1万円、5,000万円を超え1億円以下なら3万円、1億円を超え5億円以下なら6万円が印紙代の目安です。
売買契約書は売主用と買主用の2通を作成するのが一般的で、それぞれが自分の保管する契約書の印紙代を負担することが多くなっています。売主が保管する契約書をコピーで済ませれば、売主側の印紙代を節約できるという考え方もありますが、契約書の扱いは買主や仲介会社と相談して決めるとよいでしょう。
工場・倉庫に金融機関の抵当権が設定されている場合、売却時に借入を完済し、抵当権を抹消する登記を行う必要があります。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。工場の場合、土地が複数の筆に分かれていたり、建物が複数棟あったりすることも多く、その分だけ登録免許税がかかります。手続きは司法書士に依頼するのが一般的で、別途司法書士への報酬が必要です。
また、登記簿上の所有者の住所や会社の本店所在地が、現在のものと異なっている場合は、売却の前に住所変更の登記が必要になります。移転を繰り返してきた会社では、登記の住所が古いままになっているケースもあるため、事前に登記簿を確認しておきましょう。抵当権が付いた物件の売却の流れについては、抵当権付きの工場・倉庫は売却できる?手続きの流れもあわせてご覧ください。
工場・倉庫の売却では、土地の面積や隣地との境界を確定させるための測量を求められることがよくあります。特に、古くから所有している土地では、境界標が失われていたり、登記簿上の面積と実際の面積が異なっていたりすることがあり、買主から「境界を確定したうえで引き渡してほしい」と条件を付けられるのが一般的です。
隣接地の所有者や道路を管理する役所の立ち会いを得て境界を確定させる「確定測量」の費用は、土地の広さや形状、隣接地の数などによって大きく変わります。数十万円程度で済む場合もあれば、敷地が広い、隣接する土地が多い、境界について隣地所有者との話し合いが必要になるといった場合は、100万円を超えることもあります。また、隣地所有者の立ち会いの日程調整などで、測量が完了するまでに数か月かかることもあるため、売却を考え始めたら早めに確認しておくことをおすすめします。
なお、測量には、隣地所有者の立ち会いを行わずに現在の土地の状況を測る「現況測量」と、隣地所有者や役所の立ち会いのもとで境界を確定させる「確定測量」があります。現況測量のほうが費用も期間も抑えられますが、境界が確定したことにはならないため、買主や金融機関から確定測量を求められた場合には改めて対応が必要です。手元に過去の確定測量図や境界確認書が残っていれば、測量を簡略化できることもあるため、まずは書類を探してみましょう。
建物が古く、そのままでは使い道がない場合や、買主が更地での引き渡しを希望する場合には、建物の解体費用が必要になります。工場・倉庫の解体費用は、建物の構造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)や延床面積、立地条件によって大きく異なり、規模によっては数千万円にのぼることもあります。また、工場の場合は、床下の機械基礎やピット、地中の配管など、建物以外の構造物の撤去費用が加わることもあります。
一方で、建物を残したまま「古家付き」の状態で売却し、解体は買主側で行ってもらうという方法もあります。この場合、解体費用の分だけ売却価格は下がるのが一般的ですが、売主が先に費用を負担する必要がなく、解体工事の手配の手間もかかりません。どちらが有利かは物件によって異なるため、解体費用の見積もりと、更地にした場合・しない場合の売却価格の見込みを比べて判断するのが現実的です。工場解体の費用の考え方については、姉妹サイトの工場解体の費用相場は?坪単価・内訳・安く抑える方法で詳しく解説しています。
操業を終えた工場では、建物の中に機械設備や金型、原材料、製品在庫、事務用品などが残っていることがよくあります。売却にあたっては、こうした残置物を撤去して引き渡すよう求められるのが一般的で、その撤去費用も売主の負担になります。特に大型の機械設備は、搬出に重機やクレーン、専門の作業員が必要になるため、撤去費用が想定以上に膨らむことがあります。
ただし、機械設備は「処分するもの」とは限りません。まだ使える機械であれば、中古機械として売却できる可能性があり、売却代金で撤去費用の一部、場合によっては全部をまかなえることもあります。撤去を業者に丸ごと依頼する前に、価値のある機械が残っていないかを確認しておくことが、費用を抑えるうえで大切なポイントです。
🏭 機械買取の現場から
機械を1台ずつではなく、まとめて売ることで撤去費用が変わるケース
当センターを運営するEkuippは中古機械の買取(機械買取センター)も手がけており、工場の閉鎖や売却にあわせて、残った機械の処分について相談を受けることがよくあります。その現場で感じるのは、機械を1台ずつ別々に処分するよりも、工場にある機械をまとめて売却したほうが、結果的に負担を大きく抑えられるということです。機械の搬出や運搬にかかる費用は、トラックや重機、作業員の手配など、台数にかかわらず発生する固定的な部分が大きいため、台数がまとまるほど1台あたりの負担が小さくなります。また、単体では値段がつきにくい古い機械でも、価値の高い機械と一緒であれば引き取ってもらえることがあります。「売れる機械だけ先に売って、残りは処分業者に」と分けてしまう前に、まとめての売却を検討してみることをおすすめします。
機械の売却で解体・撤去の費用を抑える考え方については、姉妹サイトの工場の機械は解体前に売却を|残置物の買取で解体費用を下げる方法でも詳しく解説しています。
古い工場・倉庫では、建材にアスベスト(石綿)が使われている可能性があります。建物を解体・改修する際には、工事の前にアスベストの有無を調べる事前調査が義務付けられており、一定規模以上の工事では調査結果の報告も必要です。2023年10月からは、事前調査を一定の資格を持つ人が行うことも義務化されています。売主が解体してから売却する場合は、この調査費用と、アスベストが見つかった場合の除去費用が必要になります。詳しくは工場のアスベスト調査とは?義務・費用・流れと解体への影響をご覧ください。
また、有害物質を使用していた工場では、土壌汚染の調査が必要になる場合があります。土壌汚染対策法では、特定有害物質を使用する施設の使用を廃止したときなどに、土地の所有者等に調査義務が生じるとされています。法律上の義務がない場合でも、買主から調査を求められることがあります。調査は、土地の利用履歴を書類などで確認する段階から始まり、汚染のおそれがある場合には土壌を採取して分析するため、内容によって費用は大きく変わります。汚染が見つかった場合の対策費用は高額になることもあるため、心当たりがある場合は早めに確認しておくことが大切です。

工場・倉庫を売却して利益(譲渡益)が出た場合は、税金がかかります。個人が売却した場合は、譲渡所得として所得税・住民税が課され、所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わります。法人が売却した場合は、譲渡益がほかの事業の損益と合算され、法人税等の対象になります。いずれの場合も、譲渡益は「売却価格から、取得費と売却にかかった費用を差し引いた金額」で計算されるため、本記事で紹介した仲介手数料や測量費などの費用は、譲渡益を計算する際に差し引けるものが多くあります。領収書などは必ず保管しておきましょう。
もう一つ注意したいのが消費税です。土地の売却には消費税がかかりませんが、消費税の課税事業者である法人や個人事業主が事業用の建物を売却する場合は、建物部分の売却代金に消費税がかかります。売買契約で土地と建物の価格の内訳をどう定めるかによって、納める消費税額が変わるため、契約前に税理士に相談しておくと安心です。売却にかかる税金の詳細は、工場・倉庫売却でかかる税金(譲渡所得税)を詳しく解説で解説しています。
ここまで紹介した費用のほかにも、売却の状況によっては次のような費用が発生することがあります。借入を予定より早く返済する場合の金融機関への繰上返済手数料、建物の不具合を売却前に修繕する場合の修繕費、工場を移転する場合の新しい拠点への移転費用などです。また、引き渡し後に、契約内容と異なる不具合が見つかった場合には、契約不適合責任として修補や損害賠償を求められる可能性もあります。特に古い工場・倉庫では、売買契約の内容をよく確認し、責任の範囲を明確にしておくことが重要です。
なお、固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に1年分が課税されますが、売買の際には引き渡し日を基準に日割りで精算し、買主から売主へ精算金を受け取るのが一般的な慣行です。費用ではありませんが、資金計画を立てる際には頭に入れておくとよいでしょう。
売却にかかる費用は、すべてが売却代金を受け取った後に支払えるわけではありません。測量費やアスベスト・土壌汚染の調査費は、売り出し前や売買契約の前に必要になることが多く、売主が先に立て替えて支払うのが一般的です。売主側で解体や機械設備の撤去を行う場合も、引き渡しまでに工事を終える必要があるため、工事代金の支払いが売却代金の入金より先になることがあります。
一方、仲介手数料は売買契約時と引き渡し時に分けて支払うケースが多く、抵当権抹消の費用や借入の返済は、引き渡し当日に売却代金から精算するのが一般的です。売却代金が入るまでに手元資金でどれだけの費用を立て替える必要があるかを把握しておくと、資金繰りに慌てずに済みます。特に事業を縮小・廃業する局面での売却では、手元資金に余裕がないことも多いため、早めに見通しを立てておくことが大切です。
売却費用を抑えるためにまず大切なのは、どの費用が必要になりそうかを早めに洗い出しておくことです。測量や調査は完了までに時間がかかるものも多く、売却を急ぐ段階になってから慌てて手配すると、費用面でも条件面でも不利になりがちです。境界の状況や、建物の図面、過去の操業内容などの資料を早めに整理しておくだけでも、その後の手続きはスムーズになります。
次に、売却方法の選択も費用に大きく影響します。仲介であれば仲介手数料がかかる一方で、市場で買主を探すため売却価格は高くなりやすい傾向があります。買取であれば仲介手数料はかからず、建物や残置物をそのままの状態で引き取ってもらえるケースもありますが、売却価格は仲介よりも低くなるのが一般的です。解体や撤去を自分で手配するか、買主側に任せるかによっても、手間と費用の負担は変わります。売却価格だけでなく、かかる費用と手間を含めた「最終的な手取り額」で比較することが大切です。
売却にかかる費用の見通しを立てるためには、あらかじめ次のような情報を整理しておくと、相談がスムーズになります。土地と建物の登記の状況(筆数・棟数・所有者の住所)、抵当権の有無と借入の残高、境界の確定状況や過去の測量図の有無、建物の構造と築年数、機械設備や残置物の量、過去に扱っていた物質など操業の内容です。すべてが揃っていなくても相談は可能ですので、分かる範囲で構いません。
Q. 売却費用は、売却価格のどれくらいを見込んでおけばよいですか?
物件の状態によって大きく異なるため、一律の割合でお伝えすることは難しいのが実情です。仲介手数料や印紙代、登記費用といった基本的な費用だけであれば比較的見通しを立てやすいですが、解体や撤去、調査が必要な物件では、それらの費用が大きな割合を占めることがあります。
Q. 仲介手数料は値引きしてもらえますか?
法律で定められているのは上限額であり、上限より低い金額で合意することは可能です。ただし、手数料の引き下げに応じるかどうかは不動産会社の判断になります。
Q. 解体してから売るのと、建物付きのまま売るのはどちらが得ですか?
一概にはいえません。解体費用と、更地にした場合に上がる売却価格の見込みを比べて判断する必要があります。建物を活用したいという買主がいる場合は、建物付きのほうが有利になることもあります。
Q. 機械が残ったままでも売却できますか?
売却自体は可能ですが、撤去を条件とされることが多く、その費用は売主の負担になるのが一般的です。まだ使える機械があれば、中古機械として売却することで撤去費用の負担を抑えられる可能性があります。
Q. 売却にかかった費用は経費になりますか?
個人の場合、仲介手数料や測量費など売却のために直接かかった費用は、譲渡所得を計算する際に「譲渡費用」として差し引けるものが多くあります。法人の場合は、損金として扱われます。具体的な扱いは税理士にご確認ください。
工場・倉庫の売却には、仲介手数料、印紙代、登記費用といった基本的な費用に加えて、測量、建物の解体、機械設備や残置物の撤去、アスベストや土壌汚染の調査など、物件の状態に応じたさまざまな費用がかかります。特に解体や撤去、調査の費用は金額の幅が大きく、手取り額を大きく左右するため、早めに必要な費用を洗い出しておくことが大切です。残された機械は、まとめて売却することで撤去費用の負担を抑えられる場合もあります。売却価格だけでなく、費用と手間を含めた最終的な手取り額で判断することが、納得のいく売却につながります。工場・倉庫の売却についても、まずはお気軽に無料相談フォームよりお問い合わせください。